まちづくり五稜郭(久保一夫社長)が運営する函館市本町9のグルメコート「五稜郭ガーデン」が、23日で開業1年を迎えた。年間の来場者は約3万人で、目標として掲げた34万人のわずか10分の1にとどまり、にぎわい創出には程遠い状態が続く。現状を打開しようと、同社は苦戦するテナント誘致や運営などの業務を市内の企業に委託する方向で調整を進めており、2年目は正念場の1年となりそうだ。
五稜郭ガーデンは昨年10月、地中海料理店1店のみで開業。現在は、ケーブルテレビ局のサテライトスタジオやラーメン店など6店が入居する。年内には飲食店など3店がオープンするが、全24区画のうち埋まるのは半分のみだ。
入居が進まない要因の一つが高額な賃料。5年契約で1区画(約16平方メートル)の家賃は10万円。同じ面積で比べると本町地区の相場より1・5倍高く、大通りに面していない点も不利な要素だ。同社は昨年末、最低賃料5万6000円で入居できる売上変動制のシステムを導入したほか、テナント誘致業務を札幌の業者に委託したが特効薬とはならず、契約を半年で打ち切った。
客足の少なさから昼の営業を一時停止する店もあり、平日にランチを提供しているのは現在2店舗のみ。入居する飲食店の関係者は「収支は正直厳しいが、徐々に上向くと信じてやっている」と打ち明ける。
一方で、明るい材料も見える。7~8月の期間限定で同社が企画した「森のビアガーデン」は、開催50日間で8000人が来場。大型スクリーンでプロ野球北海道日本ハムファイターズの試合を放映した9月中旬以降は、多くのファンが詰め掛けた。久保社長は「少しずつだが、流れが変わってきていると感じる」と手応えをつかむ。
ただ、「現状のままでは3、4年後に資金面で厳しくなる」(久保社長)ことから、テナント誘致は待ったなしの状態だ。同社は、入居を希望する企業との協議や施設の運営などを市内の業者に委託し、来年は少なくとも2、3店の開業を目指す。
久保社長は「本町地区に若者を呼び、まちを活性化させるというコンセプトに変わりはない。焼きとりやおでん、カレーなどを提供する店を誘致して、冬場も盛り上げたい」と話している。(山田大輔)