北国の野菜は実に美しい。昨年秋に講演で訪れた芦別で、あらためてその事実を確認した。今年は雪が解けないうちから夏野菜の季節を、首を長くして待っていた。
芦別に限らない。北海道の各地で素晴らしい野菜が育っている。雨が降れば心配、降らなくても心配。涼しくても心配、暑すぎても心配。天気予報は農作物が心配で真剣にチェックするようになった。そして今、まさにその季節である。
写真は親しくしている農家から届いた野菜たち。さっそく自宅で開いている生活文化塾の主役にした。生徒さんたちの感嘆の声は想像以上で、記者会見場のようにカメラのシャッター音が響いた。それほど都市生活に慣れた私たちは日頃、こんなに美しい野菜を見ていないということなのだろう。
丸かじりできる細いニンジンや大根、かわいい蕪、しゃんとしたオカヒジキ、しっかりと角張ったオクラ、つやつやのナス…どれもこれもスーパーで見ないものばかりだ。だがこのような新鮮で美しい野菜の多くは、本州のレストランとの契約で出荷されると聞いた。地産地消とどんなに叫んでも現実は厳しい。その素晴らしさを高く評価してくれる安定的な販路を優先させるのは、生産者にとって当然である。
ならば、せめてふぞろいでも傷ものでもよいから、新鮮な季節の恵を地元にも普及させてもらえないものだろうか。上質な塩とオイルがあれば充分である。美しい野菜はそのままで美味しい。そして花の命と同じで野菜の旬も短い。いっそう愛おしい。(生活デザイナー)