現存する野球のクラブチームとして国内最古の歴史を持つ、函館太洋(オーシャン)倶楽部」(辻見典之監督)が、今年で創設110周年の節目を迎える。記念大会の実施や少年野球との連係を図るなどし、道南の野球をさらに盛り上げる考えだ。辻見監督は「脈々と続いてきた伝統を絶やすことなく受け継ぎ、少しでも地元に還元できれば」と意欲を燃やす。
同クラブは1907(明治40)年に創設された。北洋漁業が盛んだった大正後期から昭和初期には青森・岩手で育ったスーパースター、久慈次郎(1898―1939年)が選手として活躍するなど黄金期を誇った。平成初期の約40人をピークに選手の減少は続いているが、全国大会を3度経験している強豪チームだ。
現在は30代の選手を中心に18~40代の28人が在籍。社会人が多いことから、全員が練習や大会にそろうことは少ないというが、就任3年目の辻見監督や高田茂樹コーチ、三井覚マネジャーのほか、2枚看板の吉田剛、奥山翔一両投手らが中心となって各種大会で勝ち星を挙げてきた。
17日は函大との今季初のオープン戦に臨み、昨年9月以来となるグラウンドの感触を確かめた。ここ数年は道南に働き口がなく若手選手の確保に苦慮しているが、今年は高校野球などで活躍した4人が新加入し、明るい話題となった。企業の理解が不可欠なことから三井マネジャーらが必要に応じて選手の勤務先に出向き、活動について説明をするという。三井マネジャーは「理解なくしては続けられないが、本当に良くしてくれる企業ばかり」と感謝する。
少子化や競技数の増加などが影響して野球に取り組む子どもが圧倒的に少なくなり、道南からは久しく甲子園出場の機会が減っている。同クラブはこの現状を憂慮し、4月から函館北リトルシニア(竹田謙治監督)と連携を図ることを決めた。今後も要請があれば拡大する考えで、同チームは「情報共有やお互いの良さを引き出し合えれば」とする。
10月には道内・東北圏のチームが会する第1回道・東北地区交流クラブ選手権大会を記念大会として誘致した。今後も活動の幅を広げる予定で、辻見監督は「110周年を契機に道南の野球チームが一丸となって盛り上げられる活動ができれば」と願っている。(小杉貴洋)