函館市西桔梗町でトマト農園を営む若松健二さん(68)はこのほど、ビニールハウスの暖房システム「薪ストーブ及び温水供給装置」を考案し、このほど特許を取得した。熱効率の良さが特徴で、廃材も燃料として活用できるため燃油コストの削減効果も期待される。今後、鉄工業者に製造を委託し、市販化する計画だ。
同システムは温水タンク付きまきストーブを熱源とし、タンク内の水を加熱して、温水を循環させる仕組み。
まきストーブを使った類似システムの特許事例はあるが、若松さんが考案したのは、まきをくべる燃焼室と温水タンクが接着した造りとなっており、排煙の熱も加熱に利用する。類似の暖房設備と比べタンクに貯めた水を短時間で効率良く暖め、まきを燃焼する際に発生する黒煙を低減させた点などが特許の決め手となった。ハウス内では畑地に配管し、循環する温水で土や室内を暖める。
若松さんはもともと物づくりが好きで、日頃から農業のコスト削減策を考えてきた。ハウスのボイラーに使う燃油が高値で推移していたこともあり、2013年9月に装置の製作に着手。この年の冬から、完成品を既設のボイラーと併用して試験的に使用した。特に1~3月は苗の生育に重要な地温を確保する必要があり、暖房をフル稼働させなければならない。装置を冬場2シーズン運用し、燃油コストを年間7~8割の削減に成功した。
現在は日中、まきストーブだけで十分暖をとることができ、夜間帯に数時間ボイラーを稼働させる程度という。実用化にめどが立ち、昨年9月に特許庁に申請。同年12月に登録された。
06年の廃油ストーブに続き、今回で2例目の特許となった若松さんは「農家の力になりたいと思い考えた。コンブの乾燥や住宅の床暖房にも応用でき、活用の場が広がればいいですね」と話している。(鈴木 潤)