函館市主催の観光ボランティア育成セミナー(事業受託者・キャリアバンク)が盛況だ。函館の歴史や知識、まちあるき観光の心構えなどを学ぶ講座で、50人以上が登録。毎回30人を超える参加者の熱気であふれている。北海道新幹線開業で急増が見込まれる観光客を出迎える市民として、おもてなしの気持ちを学んでいる。
全5回の日程で昨年12月5日に開講し、同19日までに3回を終えた。参加者は既にガイドとして活動している人から大学生まで動機はさまざまで、団体職員の男性(64)は「函館をもっと知りたいと思い参加した。皆さんの知識がすごいので勉強になります」と話した。
19日には実際に参加者が考案した函館ゆかりの人物を巡るコースで、案内役を交代しながら散策した。世界でも珍しい宗派の異なる教会や寺院を一点で眺めることのできる大三坂、旧金森洋物館裏に残る明治の刻印レンガなど、函館工業高等専門学校の奥平理准教授が随所で歴史を掘り起こす面白さを伝えた。
新幹線開業後はまちあるき観光の需要増加とガイド不足の懸念が指摘されている。幅広い専門知識を有する人材の育成は簡単ではないが、奥平准教授は「講座を積み重ねて、少しずつ増やしていくしかないが、市民一人一人が観光客とどう接していけるかで、『どうされましたか』の一言が大切になる」と指摘する。
初回の講師を務めた観光ボランティア団体「一會の会」の佐藤喜久恵会長も「充足、不足しているという考えではなく、ちょっとしたおもてなしの気持ちを持つことで市民全員がガイドになれる」と話す。
函館には〝市民総ガイド化〟の素地はあり、昨年で10回目となった歴史、風土の知識を問う「はこだて検定」合格者の活用なども有効な手段だ。市観光部観光推進課の横山敬一課長は「観光客からグルメや景色だけではなく『函館は住んでいる人も良かった』と言われるような街にしていきたい」と話している。(今井正一)