配車サービス大手「DiDiモビリティジャパン」(東京)は21日、函館と札幌でユーザー数が世界中で5億人を超すタクシー配車アプリサービス「DiDi」の運用を開始した。中国国内での圧倒的シェアに加え、日本でも東京や大阪、京都などで運用が始まっており、インバウンド観光客らが多く訪れる函館でのタクシー活用の起爆剤として期待が集まっている。
同社は中国の配車サービス大手・滴滴出行とソフトバンクが50%ずつ出資した合弁会社。配車アプリ「DiDi」は2018年10月時点でドライバー数3100万人、サービス提供は1000都市にのぼり、世界最大級の交通プラットフォームとして知られる。
道内では今月初旬から富良野で先行運用し、21日から函館と札幌でもスタート。このうち函館ではことぶき第一交通と美咲第一交通、道南ハイヤー、北の星タクシーの4事業者約190台で運用される見込み。
利用の流れは、DiDiアプリを使い乗客がスマホなどからタクシー配車を希望すると、位置情報を基に乗客から最も近い場所にいるドライバーのタブレットに通知が届く。ドライバーは対応できるかできないかを判断し、できない場合は次のドライバーへと通知する仕組み。利用者は乗車するタクシー事業者を選択できないが、一方で車両到着時間が平均5分以内(18年12月実績)と即応可能なのが強みだ。現金決済のほか、DiDiアプリ内でのPayPayによる決済も可能。また、アプリ上では利用客の近隣で営業中のタクシー位置をリアルタイムで確認できる。
さらに事業者は、アプリの運用で日々集まる膨大なビッグデータを基に、需要予測といった恩恵を受けることも。大阪ではDiDi導入前の18年と導入後の19年の3月を比較して、タクシーの走行距離は変わらなかった一方、営業収入が10%向上するなど、効率化が図られたという。
北の星タクシーの小堤文郎社長は「アプリには翻訳機能もあるので、ドライバーにとってもありがたい。(アプリの運用)開始をチャンスととらえ、タクシーの使用促進を図っていきたい」とする。DiDi社営業本部の太田靖士本部長は「インバウンド観光客らの利用に期待している。今後も利用可能な都市や地域を増やしていき、交通弱者と呼ばれる人たちの活用を増やしていくことにも力を入れていきたい」としている。
同社によると、今年度中に北海道を含め福岡など全国13都市に利用エリアを拡大していく計画。また利用拡大を促進するため、道南でも割引キャンペーンとして、初回利用1000円引きや友達紹介で1000円引きクーポンのプレゼントなどを実施することで、シェアの伸ばしていきたい考えだ。(野口賢清)