エスイーシー(函館市末広町、永井英夫社長)が特許を取得している樹脂素材「ジェラフィン」が、今年度の公益社団法人発明協会主催の全国発明表彰で「多目的・高性能耐圧防水ポリマーの発明」として、未来創造発明奨励賞を受賞した。道内企業では初めての受賞で、高速道路や深海、宇宙空間などあらゆる環境での活用が期待されている。(野口賢清)
ジェラフィン(エスイーシーの登録商標)とはゼリー状のパラフィン(石油から分離された白色半透明の個体)のことで、深海で使われる電子機器の耐圧防水素材として開発された。二液混合式のウレタン樹脂で、凝固後は無色透明になる珍しい特徴を持つ。水深1万メートルの水圧下でも潰れず、水を通さない性能を持つ一方、光や電波は通し、電子部品が動作可能な状態を保つ。金属面に塗布すれば、密着して腐食を防ぐコーティングとしても活用できる。
海洋分野ではジェラフィンで海中カメラを覆うことで、海底でも安定した動作を確保することが可能。無色透明のためカメラの視界を妨げることもないという。またケーブルなどの海洋IoTインフラの保護にも使われるほか、社会インフラでは野外監視カメラや信号灯の防水、防湿対策などにも使われる。
橋梁の伸縮装置の止水対策としても注目を集めており、同社では現在交通量の多い首都圏の高速道路での使用を想定した試験を実施している。効果が認められば全国に波及する可能性もあり、大きな期待が集まっている。永井社長は「有効活用できる分野をしっかりと見極めつつ、生産量を増やして地元経済に貢献したい」と話している。