建設や金融、商社など約200の企業と団体でつくるシンクタンク「日本プロジェクト産業協議会」(東京)は、本州と北海道を結ぶ新たな海底トンネルの建設構想案を近く国土交通省に提出する。2つの新トンネルで貨物列車とカートレインなどの輸送を図るほか、内部に送電線や天然ガスのパイプラインを敷設。北海道の食料・エネルギー基地化を図るとともに、新幹線の高速化を実現させる狙いで、将来の青函トンネルのあり方について今後議論を呼びそうだ。
既存の青函トンネル(53・85キロ)近くに敷設する計画で、全長は約30キロ。海底に掘り進む勾配を急にすることで事業費を削減する方針で、20年ほどの工期で総事業費は約7500億円を見積もる。
敷設工事は2段階を想定。トラックなどを直接積み込めるカートレインと貨物列車の供用トンネルを先行して建設。次いで、鉄道貨物の需要増加と自動運転走行車の普及などを考慮に入れながら、無人自動運転車専用トンネルの工事に着手する考え。
通行料は大型トラック片道1台当たり5350円とし、1日3000台の需要で年約117億円の収入を予定。同協議会は「年間の電力託送収入約30億円と合わせると、約50年で総事業費を回収できる」とする。
プロジェクトを推進する背景には、新幹線の所要時間短縮という課題がある。現在、青函トンネルを含めた貨物列車との共用走行区間(約82キロ)は、新幹線の最高時速が140キロに制限されている。新トンネルが完成すると青函トンネルは新幹線専用となり、時速260キロの高速走行を可能とすることで、新函館北斗―東京間は3時間台で結ばれるようになる。
また、同協議会によると、東京―札幌間の10トントラックの輸送単価は、同区間とほぼ同じ距離の東京―福岡間と比較すると5・5万円ほど高い。新トンネルには、コスト削減と輸送時間短縮による高品質の食材配送という利点もあるという。
このほか、本州に売電するための送電網を整備するとともに、サハリン(ロシア)からの天然ガス供給を見据え、海底パイプラインを敷設することで安定したエネルギー輸送につなげたい考えだ。
膨大な事業費がかかるため実現の可能性は未知数だが、同協議会は「巨大プロジェクトだが、将来を見据えて議論を始める時期に来ている。案を基に地元関係者が30年、40年先の地域活性化に向けて考える着火剤としてほしい」としている。(山田大輔)